「有酸素運動ってどんな効果があるの?」
「有酸素運動ってダイエット効果もあるって聞いたけど本当?」

有酸素運動をはじめようかな、と考えている方は、このような疑問があるかと思います。

実は有酸素運動はメリットばかりで、ほとんどの方にオススメできる運動なんです。
たとえば、有酸素運動には、以下のような効果が期待できます。

・体重や体脂肪を落とす
・動脈硬化や心臓の病気を予防する
・体力をつけることができる

このほかにも、まだまだたくさんのメリットがあります。

わたしは普段理学療法士としてはたらいていますが、有酸素運動はいいことづくしなので、ほとんどの方に有酸素運動を提案しています。

さて、有酸素運動には、このほかにどのような効果があるのでしょうか?
そこで今回は、有酸素運動の代表的な10コの効果を紹介していきます。

この記事を読み終えた頃にはきっと「有酸素運動って、ほんっとうに健康にいい運動なんだな!」と思えることでしょう。

それではまいります!

1.そもそも有酸素運動とは?

「そもそも有酸素運動って何?」という方もいると思います。
そのため、まずはカンタンに有酸素運動について説明します。

1-1.有酸素運動とは、息が上がらない程度の軽い運動

有酸素運動とは、息が上がらない程度の軽い運動

有酸素運動とは、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの、中・長時間できるような軽い運動を指します。

息があがらない範囲でおこなうため、安全性が高い運動ともいえます。

1-2.どんな人にオススメ?

有酸素運動はどんな人にオススメ?

有酸素運動は、基本的にどなたにもオススメできる運動です。
しかし、有酸素運動をするにあたって、気をつけなきゃいけない方もいます。

たとえば、以下のような方などは、事前に医師や理学療法士などに相談することをオススメします。

・高血圧、もしくは低血圧の方
・病気などにより、体力が著しく低下している方
・転倒を繰り返している方
・心臓や肺、腎臓に病気をわずらっている方
・脳卒中を経験された方 など

もし該当する方は、まずは医療の専門家に相談しましょう。
先ほど、有酸素運動は安全性が高い運動とお伝えしましたが、リスクはゼロとはいえません。

もちろん健康な方でも、体調に合わせて無理なくおこなう必要があります。


それでは本題に入ります。

次の章では、有酸素運動のメリットを10コ紹介していきますね。
実際にはもっとたくさんのメリットがあるんですが、多くなりすぎるため代表的なものだけをピックアップしました。

それではまいりましょう!

2.有酸素運動はメリットがいっぱい! 代表的な10コの効果とは

今から、有酸素運動の代表的な効果を10コお伝えしていきます。
医学書や論文を中心に確認してまとめたので、ぜひ参考にしてください。

2-1.ダイエット効果がある

有酸素運動はダイエット効果がある

「有酸素運動ってダイエット効果があるの?」
このように思う方が多いと思います。

結論からいうと、有酸素運動は、主に体内の「糖質」や「脂質」などをエネルギー源とするため、ダイエット効果が期待できます。

ちなみに、有酸素運動は1回につき10分以上はおこなうことをオススメします。
なぜなら、運動の最初の方は「糖質」の代謝がメインであり、10分を超えたあたりからは少しずつ「脂質」の代謝へと移行していくからです。

ちなみに、息が弾むような激しい運動の場合は、糖質の代謝がメインになってくるため、脂質の代謝は起こりにくいといわれています。

なので、糖質と脂質を両方燃焼したい場合は、軽い負荷である有酸素運動がベストなんです。

2-2.慢性的な痛みの軽減

有酸素運動は慢性的な痛みを軽減させる

有酸素運動は、慢性的な痛み(※一般的に3か月以上続く痛み)を軽減させる効果があります。

特に、「慢性腰痛」や「変形性ひざ関節症」の慢性痛の緩和につながりやすいと報告されています。

とはいえ、強い痛みのあるなかで無理に有酸素運動をすると、痛みが悪化する危険性も。
あくまで、無理のない範囲で有酸素運動をすることが大切です。

2-3.ラクに長時間の運動ができる

有酸素運動はラクに長時間できる

有酸素運動は、ウォーキングなどの軽い負荷量なので、ラクに長時間できる運動です。

そのため、運動初心者の方でも「ああ、苦しい運動だからもうやりたくない…」というような挫折もしにくく、運動を習慣化しやすいと思います。

ところでみなさんは、なぜ有酸素運動が長い時間できるのかをご存知ですか?
もし気になる方は、こちらの1章に書いてありますので、ぜひご覧ください。

2-4.全身の持久力をアップさせることができる(もしくは維持できる)

有酸素運動は全身の持久力をアップさせることができる(もしくは維持できる)

有酸素運動は、全身の持久力をアップさせる効果もあります。

有酸素運動をおこなうことで、全身持久力の指標である「最大酸素摂取量(さいだいさんそせっしゅりょう)」が高まるからです。

最大酸素摂取量とは、名前のとおり「運動中に摂取する(取り込める)ことができる酸素の量」です。

また、有酸素運動は、呼吸に関わる筋肉を鍛えることもできます。
呼吸の筋力がアップすると、酸素を効率的に取り込めるようになります。

このように、酸素を取り込める量が多くなると、その分カラダを動かすためのエネルギーをたくさん作り出すことができるようになるんです!

そのため、有酸素運動をすることで全身の持久力がアップする、というわけです。

しかし、1回だけの運動では、大きな持久力アップの効果は感じられないと思います。
なので、20〜60分の運動を1週間に3〜5回、そして約8週間は継続することをオススメします。

2-5.血圧を下げる

有酸素運動は血圧を下げる

有酸素運動をおこなうと、血流量が増え、血管の壁には力学的なストレスがかかります。

そうすると、血管の内側にある内皮細胞(ないひさいぼう)から、「一酸化窒素(いっさんかちっそ)」が放出されます。

一酸化窒素には血管を広げる作用があるため、血圧を下げる効果が期待できます。

なので、有酸素運動は血圧が高めの方にもオススメなんです。

しかし、血圧が高すぎる場合(安静時の収縮期血圧が200mmHg以上・安静時の拡張期血圧が120mmHg以上など)は、事故のリスクがあるため、有酸素運動をおこなわない方が良いときもあります。

さらには、その人の血管の状態にもよるため、高血圧の方で「わたしって有酸素運動をしても大丈夫なのかな?」と不安な方は、医療従事者に相談してから開始してくださいね。

余談ですが、安全に運動をおこなうためにも、普段から自分の血圧を把握しておくといいですよ。
「自分の血圧はいつもだいたい〇〇だな」と分かっていると、「今日は血圧が高めだから、無理はしないでおこう」「すこし血圧が落ち着いてから運動しよう」と安全な判断ができるからです。

2-6.動脈硬化や心疾患のリスクをおさえる

有酸素運動は動脈硬化や心疾患のリスクをおさえる

高血圧が続くと、動脈硬化となるリスクが高まります。

もし動脈硬化になったら、心筋梗塞狭心症などの危険性があるため、普段から予防しておく必要があります。

その予防方法が、有酸素運動なんですね。
有酸素運動は、動脈硬化の危険因子である「LDL(悪玉)コレステロール」を減らしてくれます。
さらに、余分なコレステロールを取り除いてくれる「HDL(善玉)コレステロール」を増やしてくれるんですよ。

コレステロールと血管

血管の老化は、若いころから少しずつはじまっています。
なので、今からでもコツコツと有酸素運動をしていくことをオススメします。

2-7.心臓への負担が少ない

有酸素運動は心臓への負担が少ない

激しい運動の場合は、自律神経の1つである「交感神経(こうかんしんけい)」がはたらきやすくなります。

交感神経がはたらくと、血圧や心拍数が上がります。
そのため、心臓へ負担がかかりやすくなるんです。

一方、有酸素運動の場合は、息が乱れない程度の軽い運動なので、交感神経の活発なはたらきをおさえることができます。
つまり、有酸素運動は、心臓へ大きな負担をかけることなくできるんです。

なので、「久しぶりに運動をしてみようかな」という方は、まずは有酸素運動からはじめてみることをオススメします。

有酸素運動は無理なく安全にできるので、リハビリの現場でも、心臓や肺に病気をわずらっている方に対してもよくおこないます。

2-8.血糖値を下げる

有酸素運動は血糖値を下げる

2型糖尿病の方は、特に有酸素運動が効果的だといわれています。
その理由をいまから少しお話ししますね。

わたしたちは、食事をすると血糖値が上がります。
そうすると、すい臓が「あ!血糖値が高いぞ!」とすばやく感知します。

そしてすい臓から「インスリン」が分泌されることで、血糖値が下がるという仕組みがヒトにはあるんですね。

しかし2型糖尿病になった場合、インスリンが十分あるにも関わらず、インスリンの効き具合(※『インスリン抵抗性』ともいいます)が悪くなることがあります。

つまり、血糖値が高い状態が続いてしまいます。

そのため、2型糖尿病の方は、インスリン抵抗性を改善し、血糖値を下げる必要があるんです。

そこで血糖値を下げるためにオススメなのが有酸素運動。

有酸素運動には、この「インスリン抵抗性」を改善する効果があるんです。
リハビリの現場でも、有酸素運動は糖尿病の方に対してのメジャーな運動療法なんですよ。

食後の高血糖をおさえるためには、食後1〜2時間のあいだに20〜60分の軽めの運動がすすめられています。
運動はできれば毎日おこない、少なくとも週に3〜5回は必要です。

2-9.筋温が高まり、筋肉の収縮速度がアップする

有酸素運動は筋温が高まり、筋肉の収縮速度がアップする

有酸素運動は、スポーツ前のウォーミングアップにも最適です。

スポーツ前にジョギングなどをすることで、筋肉が温まります(=筋温が高まる)。
筋肉が温まると、筋肉の収縮速度や筋力がアップするんですね。

ちなみに、おおよそ10分で筋温は2度上がり、20分をさかいに筋温はピークに達します。

また、スポーツ前の有酸素運動でカラダを温めることは、ケガや運動中の事故の予防にもなります。
もしカラダが冷えた状態で急に運動をおこなうと、肉離れを起こしたり、心臓に大きな負担がかかったりする可能性があるからです。

そのため、スポーツ前には、カラダに負担がかかりにくく、かつ筋肉を温めてくれる有酸素運動からスタートすることをオススメします。

2-10.うつ症状や不安の軽減・予防が期待できる

有酸素運動はうつ症状や不安の軽減・予防が期待できる

これまで、有酸素運動の効果として、カラダにとってのメリットを中心にお伝えしてきました。
しかし有酸素運動は、心や脳に対しても良い効果をあたえてくれます。

有酸素運動は、うつ症状や不安に対して、小〜中等度の効果があるといわれています。
さらには、うつの発症を予防できる効果があるとの報告もあります。

このように有酸素運動は、カラダだけでなく、心身ともに良い影響をあたえてくれるんです。

しかし、うつ症状は休息が必要な時期もありますので、医師と相談して運動を進めていくことがとても重要です。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか?
ここまでお読みになって「有酸素運動って、メリット多すぎない?」とお思いになったかもしれません。

そうなんです!
有酸素運動にはたくさんの良い効果があるため、カラダの健康を保つためにも、多くの方が取り入れた方がいい運動なんですね。

仕事や育児などで忙しい方だと、なかなか運動の時間を作れない方もいると思います。
しかし、将来の病気や肥満などの予防にもなりますので、ぜひスキマ時間などに取り組まれてみてはいかがでしょうか?

ただし、記事中でもちょこちょこお話ししてきましたが、そのヒトのカラダの状態によっては“有酸素運動をやらない方が良い方”もいらっしゃいますので、くれぐれもご注意ください。
ぜひ、安全を確保したうえで取り組んでいただけたらと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【参考文献】
・一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会:呼吸リハビリテーションに関するステートメント 2018,http://www.jsrcr.jp/uploads/files/rehabilitation_statement2018_v2.pdf
・慢性疼痛治療ガイドライン,http://www.paincenter.jp/img/businessguide/chronicpaintreatmentguide_jp.pdf
・日本うつ病学会:うつ病治療ガイドライン-精神科作業療法-2018,http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/mood_disorder/img/181206_01.pdf