「骨盤のゆがみを治すのには、ストレッチがいい!」

このように聞いたことはありませんか?

しかし実は、長いあいだ骨盤がゆがんでいた場合、ストレッチだけでは、ゆがみの根本解決がむずかしいケースがあるのです・・・

これは、理学療法士として、骨盤のゆがみがある方をたくさん治療してきて、強く感じていることです。

逆に、今まで効果的だったアプローチは、以下の3つを組み合わせることです。

骨盤のゆがみに対する3つのアプローチ
  • ストレッチ
  • 筋力トレーニング
  • 日常生活の改善

とはいえ、どのようなエクササイズをすればいいのか悩みますよね。

そこでこの記事では、わたしが実際にリハビリの現場でお伝えしている、骨盤のゆがみをリセットする方法をお伝えしていきます。

骨盤のゆがみを予防する習慣もご紹介するため、ゆがみの予防に興味がある方も、ぜひ参考にしてください。

それでは、まいりましょう。

1.骨盤がゆがむ原因は? 姿勢の悪さが筋肉のアンバランスを引き起こす

これまでに、骨盤がゆがんでいる方をたくさん見てきましたが、みなさんに「ある共通点」があります。

それは、「日ごろの姿勢の悪さ」です。

日ごろの姿勢の悪さは、骨盤まわりの筋肉のアンバランスを引き起こし、骨盤のゆがみを生み出してしまうのです。

たとえば、日ごろから、立っているときに腰をそらせるクセがあるとします。そのときに、骨盤まわりの筋肉がどのような状態になっているのか、一例をご紹介します。

骨盤の位置と筋肉の関係

反り腰となっているときは、「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」という筋肉がはたらきやすく(収縮しやすく)なります。

上の図にもあるように、脊柱起立筋の一部は骨盤の後ろ側とくっついているため、はたらき過ぎると骨盤を過度に前にかたむけてしまうのです。

脊柱起立筋・・・。なんだか、むずかしい名前の筋肉ですよね。
骨盤を前にかたむけるほか、背中をピンっと張るときにもはたらきます。

一方、骨盤を後ろにかたむけるはたらきがある「腹直筋(ふくちょくきん)」という筋肉は伸びてしまいます。この伸びた状態が続くと、腹直筋がはたらきにくくなり、骨盤を正しい位置にキープさせることがむずかしくなるのです。

ちなみに、腹直筋は、きたえると板チョコの表面みたいな形に割れる、おなかの筋肉です。世間一般のイメージである「腹筋」を指します。

ここまでの話しをまとめると、以下のようになります。

反り腰になる

脊柱起立筋がはたらきすぎる+腹直筋がはたらきにくくなる

骨盤が正常よりも前にかたむいてしまう
(※ほんの一例です。本当は、もっとさまざまな原因があります。)

このように、姿勢の悪さが引き金となり、筋肉のアンバランスを引き起こすことで、骨盤がゆがんでしまうのです。

ちなみに、今回のケースの場合、骨盤の前のかたむきを改善するためには、以下のアプローチをおこなっていきます。

  • 脊柱起立筋がはたらきすぎている脊柱起立筋をストレッチしてゆるめる(ストレッチ)
  • 腹直筋がはたらきにくくなっている腹直筋の筋トレをして、前にかたむきすぎた骨盤を、正しい位置まで後ろにかたむける(筋力トレーニング)
  • 普段から反り腰となるクセがある日常生活で腰をそらせる姿勢をとらないよう気をつける(日常生活の改善)

(※ほんの一例です。本当は、もっとさまざまな方法があります。)

さて、冒頭で「骨盤のゆがみは、ストレッチだけでは元に戻る」とお伝えしましたが、その理由がご理解いただけたかと思います。

このように、骨盤のゆがみを解消していくためには「ストレッチ」「筋力トレーニング」「日常生活の改善」、この3つを組み合わせることがとても大切なんです!

「じゃあ一体どんなエクササイズをすればいいの?」と思うかもしれませんが、その前に確認すべき重要なことがあります。

それは、「自分の骨盤がどのようにゆがんでいるかを把握する」こと。

問診
病院でカラダを診てもらうときと同じです。まずは、お医者さんが問診と検査をし、カラダの状態を把握しますよね。そして、症状に合わせて、適切な治療を進めていくと思います。

同じように、まずは自分の骨盤の状態を把握することから始め、それから症状に合わせたエクササイズをおこなっていくことが大切なんです!

次の章では、骨盤のゆがみをチェックする方法をお伝えしてきます。
ぜひ取り組んでみて、自分の骨盤の状態を確認してみてくださいね。

2.あなたはどのゆがみのタイプ? 骨盤のゆがみをチェックする方法

骨盤のゆがみを把握するためには、以下の3つをチェックする必要があります。

  • 骨盤の前後のかたむき
  • 骨盤の高さの左右差
  • 骨盤の回旋の左右差

※回旋(かいせん)とは、骨盤を上から見下ろしたとして、骨盤が時計周り、もしくは半時計周りの運動を指します

骨盤は立体的なので、さまざまな方向から骨盤のゆがみをとらえていく必要があるのです。

なんだかむずかしそう・・・と感じるかもしれませんが
「あ、自分の骨盤って前にかたむいているんだな!」
「自分の骨盤って左右でこんなにも高さが違うんだ!」

このように、医療従事者以外は、ザックリと骨盤の状態がわかればオッケーなので、ご安心くださいね。

それではまいりましょう!

2-1.骨盤の前後のかたむきをチェックする方法

骨盤の前傾・後傾の検査

【方法】
1.はだしとなり、壁から踵(かかと)を1cmほど離してまっすぐに立ちます
2.頭と背中、おしりを壁にくっつけます
3.壁と腰のすき間に手を入れて、どれくらい手が入るかを確認します

Check【◯】
・手のひら1枚分がぴったりと入る
・手首くらいで止まる

【△】
・壁と腰のすき間に手のひらが2枚分入る→骨盤が正常より前にかたむいている可能性あり
・手のひらが入らない→骨盤が後ろにかたむいている可能性あり

骨盤の前後のかたむきに問題がみつかった場合は、以下のエクササイズをご確認ください。

・骨盤が前にかたむいていた場合のエクササイズ

・骨盤が後ろにかたむいていた場合のエクササイズ

2-2.骨盤の高さの左右差をチェックする方法

骨盤の挙上・下制の検査

※上の図の場合、右の骨盤が上がっており、左の骨盤が下がっています

【方法】
1.椅子に座ります
2.両方の脇腹に手を当て、そのまま手を下げていき、最初にぶつかる骨をみつけます
3.みつけたら、骨盤の高さに左右差がないかを確認します

Check【◯】
骨盤の高さに左右差なし

【△】
骨盤の高さに左右差あり

骨盤の高さに左右差がみつかった場合は、以下のエクササイズをオススメします。

・骨盤の高さに左右差がある人向けのエクササイズ

2-3.骨盤の回旋の左右差をチェックする方法

骨盤回旋の評価※1.回旋(かいせん)とは、骨盤を上から見下ろしたとして、骨盤が時計周り、もしくは半時計周りの運動を指します
※2.上の写真の場合は、骨盤は右に回旋しています

【方法】
1.椅子に座り、おへそを正面に向けます
2.骨盤をつかみ、1番前にでっぱっている骨を探し手をそえます(おおよその位置でかまいません)
3.そのまま骨盤を見下ろし、左右の骨盤の回旋具合を確認する

Check【◯】
骨盤の回旋に左右差なし

【△】
骨盤の回旋に左右差あり

骨盤の回旋に左右差がみつかった場合は、以下のエクササイズをご確認ください。

・骨盤の回旋に左右差がある人向けのエクササイズ

いかがでしたか?
骨盤のゆがみの状態は確認できましたか?

次はいよいよ、骨盤のゆがみをリセットするストレッチや、筋力トレーニングなどのエクササイズをご紹介していきます。

3.骨盤のゆがみをリセットするストレッチ&筋トレエクササイズ12選!

この章では、骨盤のゆがみをリセットするためのエクササイズをご紹介していきます。

骨盤のゆがみのタイプ別に紹介していくため、「2.あなたはどのゆがみのタイプ? 骨盤のゆがみをチェックする方法」の結果をもとに、自分に合ったエクササイズをおこなってくださいね。

3-1.エクササイズを始める前に必ずお読みください

エクササイズをおこなうにあたっての注意点
今からご紹介するのは、健常者向けのエクササイズです。

脊柱や股関節の疾患がある方や、高血圧、体調不良などの方が以下のエクササイズをおこなうと、重大な事故につながる可能性があります。
十分ご注意のうえで、エクササイズをおこなってください。

【注意点】
・既往歴、現病歴がある方は、絶対におこなわないでください
・体調が優れない方、高血圧もしくは低血圧の方はおこなわないでください
・少しでも痛みが出たらすぐに中止してください
・まずは少ない回数で、ゆっくりとおこなってください

3-2.骨盤が前にかたむいている人向けのエクササイズ4つ

骨盤が前にかたむいている場合、以下の3つのパターンがよくみられます。

・腰の筋肉が硬くなっている
・骨盤の前側にある筋肉が硬くなっている
・おしりの筋肉がうまくはたらいていない

今から、これらの問題にアプローチするエクササイズをご紹介していきます!

なお、以下の4つのメニューとなります。

① 腰の筋肉(腰部脊柱起立筋)のストレッチ
② 骨盤を後ろにたおす運動
③ 腸腰筋(ちょうようきん)のストレッチ
④ おしりの筋肉(大殿筋)の筋力トレーニング

① 腰の筋肉(腰部脊柱起立筋)のストレッチ

腰部脊柱起立筋のストレッチ
【方法】
1.上向きになり、両方のひざ裏で手を組みます
2.おしりが天井を向くように、ひざを胸に引き寄せます

【回数】
20秒間×2回セット

② 骨盤を後ろにたおす運動

骨盤の後傾運動
【方法】
1.上向きになり、床と腰のあいだに両手を入れます
2.両手を腰で押しつぶすように意識しながら、骨盤をうしろにたおします
3.両手を押しつぶした状態で5秒間止めます

【回数】
10回

③ 腸腰筋(ちょうようきん)のストレッチ

腸腰筋のストレッチ
【方法】
1.両手をつき、片脚を立てます
2.もう一方の足を後ろに伸ばします
3.後ろに伸ばしている方の足の付け根を、じんわりと伸ばします
4.反対の足も同じようにおこないます

【回数】
左右それぞれ30秒

腸腰筋は、股関節の前についている筋肉です。そのため、腸腰筋が硬くなると、引っぱられるように骨盤は前にかたむいてしまうのです。
また、腸腰筋の柔らかさは、腰痛予防にもつながりますよ。

④ おしりの筋肉(大殿筋)の筋力トレーニング

大殿筋の筋力トレーニング
【方法】
1.うつ伏せとなり、骨盤の前に少し厚めのタオルを入れます
2.膝を直角に曲げたまま、天井に向かって足をゆっくり上げます
3.反対の足も同じようにおこないます

【回数】
左右それぞれ10回

大殿筋がしっかりとはたらくと、骨盤の前のかたむきを予防することができます。
ちなみに、骨盤の前にタオルを入れる理由は、エクササイズのときに腰の筋肉がはたらき過ぎないようにするためです。

3-3.骨盤が後ろにかたむいている人向けのエクササイズ4つ

骨盤が後ろにかたむいている場合、以下の3つのパターンがよくみられます。

・もも裏の筋肉が硬くなっている
・おしりの筋肉がうまくはたらいていない
・股関節の前側にある筋肉がうまくはたらいていない

以下の4項目が、上記の問題にアプローチする4つのエクササイズです。

① もも裏の筋肉の(ハムストリングス)ストレッチ
② 大腿直筋(だいたいちょっきん)の筋力トレーニング
③ おしりの筋肉(大殿筋)の筋力トレーニング
④ 腸腰筋(ちょうようきん)の筋力トレーニング

① もも裏の筋肉(ハムストリングス)のストレッチ

ハムストリングスのストレッチ
【方法】
1.丸めたタオルをひざ裏に入れ、足を前に伸ばします
2.体をゆっくりと前にたおします
3.反対の足も同じようにおこないます

【回数】
左右それぞれ30秒

ちなみに、タオルを使わないと、もも裏でなく、ひざ裏がつっぱりやすくなります。

② 大腿直筋(だいたいちょっきん)の筋力トレーニング

大腿直筋の筋力トレーニング
【方法】
1.上向きとなり、片方のひざを90°曲げます。もう片方のひざは伸ばしておきます。
2.伸ばしておいた足を、床から45°あたりまで上げます
3.伸ばした足をゆっくり下ろします
4.反対の足も同じようにおこないます

【方法】
左右それぞれ10回

③ おしりの筋肉(大殿筋)の筋力トレーニング

大殿筋の筋力トレーニング
【方法】
1.うつ伏せとなり、骨盤の前に少し厚めのタオルを入れます
2.膝を直角に曲げたまま、天井に向かって足をゆっくり上げます
3.反対も同じようにおこないます

【回数】
左右それぞれ10回

「3-2.骨盤が前にかたむいている人向けのエクササイズ4つ」でお伝えした、おしりの筋トレと同じメニューです。
実は、大殿筋が弱いと、ハムストリングスが頑張りすぎるため、骨盤が後ろにたおれやすくなるのです。
つまり、大殿筋は「骨盤が前にかたむいている人」「後ろにたおれている人」、どちらにも影響を与える大切な筋肉なんです!

④ 腸腰筋(ちょうようきん)の筋力トレーニング

腸腰筋の筋力トレーニング
【方法】
1.姿勢よく座ります
2.よい姿勢をキープしたまま、太ももを少し上げます
3.上からひざを手で押し、足と力くらべをするようにします

【回数】
左右それぞれ10回

3-4.骨盤の高さに左右差がある人向けのエクササイズ2つ

骨盤の高さに左右差がある場合、以下の2つが原因となっている可能性があります。

・腰の横側についている筋肉が硬くなっている
・股関節の横側についている筋肉がうまくはたらいていない

そして、以下の2項目が、上記の原因に対するエクササイズです。

① 腰方形筋(ようほうけいきん)のストレッチ
② 中殿筋(ちゅうでんきん)の筋力トレーニング

① 腰方形筋(ようほうけいきん)のストレッチ

腰方形筋のストレッチ
【方法】
1.椅子やベッドなどに座り、からだを右斜め前にたおします
2.右手で左手をつかみ、右足小指の方向にゆっくりと引っぱります(※その際、左のお尻が椅子やベッドから離れないようにしてください)
3.反対も同じようにおこないます

【回数】
左右それぞれ20秒

腰方形筋とは、一番下の肋骨と、骨盤の上の部分をつないでいる筋肉。左右に存在しています。
腰方形筋のはらたきは、骨盤を引き上げること。そのため、片方の腰方形筋が硬くなると、骨盤の高さに左右差が出やすくなるのです。

② 中殿筋(ちゅうでんきん)の筋力トレーニング

中殿筋の筋力トレーニング
【方法】
1.横向きに寝て、下側の足を少し曲げておきます。上側の足はひざを伸ばしておきます。
2.上側の足を、ひざを伸ばしたまま真横に開きます(※開いている足は、おなか側にたおれないようにしてください)
3.反対の足も同じようにおこないます

【回数】
左右それぞれ10回

リハビリの現場でも、多くのケースでチェックする「中殿筋」。中殿筋は、歩くときに骨盤を安定させる、とても重要な筋肉です!
しかし、中殿筋が弱くなると、骨盤がグラグラしやすくなり、歩くときに不安定になることも・・・。
そのような場合、中殿筋を助けるようにはたらく筋肉が、先ほどご紹介した「腰方形筋」です。
中殿筋が弱いと、代わりに骨盤を引き上げる腰方形筋がはたらくため、その結果、骨盤の高さに左右差が生まれてしまうのです。

3-5.骨盤が回旋している人向けのエクササイズ2つ

骨盤が回旋(かいせん)する原因として、以下の筋肉に原因がある可能性があります。

・胸の筋肉とおなかの筋肉が硬くなっている
・胸の筋肉とおなかの筋肉が弱くなっている

そのため、以下の2つのエクササイズをおすすめします。

① 骨盤の回旋ストレッチ(大胸筋・外腹斜筋・反対側の内腹斜筋)
② 骨盤の回旋の筋力トレーニング(大胸筋・外腹斜筋・反対側の内腹斜筋)

① 骨盤の回旋ストレッチ(大胸筋・外腹斜筋・反対側の内腹斜筋)

骨盤回旋のストレッチ
【方法】
1.上向きで寝ます
2.左足を右側にたおしていきます。その際、右手で左膝を床にくっつけます
3.左の腕を斜め上に伸ばします。その際、左の手のひらは天井に向けて、肩が床からなるべく浮いてこないようにします
4.反対も同じようにおこないます

【回数】
左右それぞれ30秒間

胸から反対側のお腹にかけて、ななめの方向に筋肉が伸ばされている感覚があればオッケーです。
ちなみに、「なんで胸の筋肉が骨盤を回旋させるの?」と思いませんでしたか?
実は、胸の筋肉が硬いと、肩が前に出やすくなることが関係しています。たとえば、右胸の筋肉が硬くなるとしましょう。そうすると、右の肩が前に出やすくなり、連動してカラダ全体が左に回ってしまいます。
このように、胸の筋肉が、カラダの向きを変えてしまうことがあるのです。

② 骨盤の回旋の筋力トレーニング(大胸筋・外腹斜筋・反対側の内腹斜筋)

骨盤回旋筋の筋力トレーニング
【方法】
1.上向きで寝ます
2.からだを起こしながら、右ひじと左ひざをくっつけます
3.反対側もおこないます(左ひじと右ひざをくっつける)

【回数】
左右それぞれ10回

ついつい息を止めがちになりますが、しっかり呼吸をしながらおこなってくださいね。

4.日常生活で気をつける10の習慣

これまで骨盤のゆがみをリセットさせるエクササイズをご紹介してきました。しかし、生活をしていくなかで、どうしても効果が薄れてくることがあります。

エクササイズを毎日おこなっていくことも大事ですが、日常生活において、日ごろから骨盤がゆがまないよう気をつけていくことは、もっと大切です!

以下に、日常生活で気をつける習慣を10個リストアップしました。ぜひチェックしてみてください。

① 足を組んで座らない
② 座っているときに、片手で頬杖をつかない
③ 後ろのポケットに財布を入れたまま座らない
④ 机に顔を伏せて寝ない
⑤ パソコン作業時などに猫背とならないようにする
⑥ 腰を反らして座らない・立たない
⑦ おしりを前にずらして、背もたれにもたれかかるようにして座らない
⑧ 荷物をいつも同じ側で持たない
⑨ いつも同じ足に体重をかけて立たない
⑩ 擦り減った靴をいつまでも履かない

「うわっ、悪い習慣ばかりしていた・・・」と痛感した方もいたのではないでしょうか?

ちょっと気をつければすぐに直せる習慣ですので、ぜひ取り入れてみてくださいね。

次の章では、骨盤がゆがむと、カラダにどのような症状が出やすいのかをお伝えしていきます。骨盤のゆがみも今のうちに解消しておきたくなると思いますよ。

それではまいりましょう。

5.骨盤がゆがむとどんなデメリットがあるの? 出てくる症状や影響を紹介

骨盤がゆがむと「腰痛」や「ひざ痛」、「首痛」など、全身に悪い影響をおよぼす可能性があります。なぜなら、骨盤が動くことによって、腰や膝などの関節も連動して動くためです。

とはいえ、実は骨盤のゆがみのパターンによって、出てきやすい症状に違いがあります。復習ですが、骨盤のゆがみは以下の4パターンです。

・骨盤が正常よりも前にかたむいている
・骨盤が正常よりも後ろにかたむいている
・骨盤の高さに左右差がある
・骨盤の回旋に左右差がある

それでは今から、それぞれのゆがみのパターン別に、出てきやすい症状について図を使ってお伝えしていきます。

実際には、これら4つのパターンがそれぞれ組み合わさっていることが多いです。たとえば、「骨盤が前にかたむいている+骨盤の高さに左右差がある」など。
しかし、それらをすべて含めて考えると、とてもややこしくなるため、今回は1つずつ解説していきますね。

5-1.骨盤の前後のかたむきが、カラダに与える影響

骨盤が正常より前にかたむいている場合

過度な骨盤前傾による影響

骨盤が正常より後ろにかたむいている場合

過度な骨盤後傾の影響

5-2.骨盤の高さの左右差が、カラダに与える影響

骨盤の高さの左右差による影響

5-3.骨盤の回旋の左右差が、カラダに与える影響

骨盤の回旋の左右差による影響

このように、骨盤のゆがみは、さまざまな症状につながるのです。
骨盤のゆがみを整えることが、いかに大切なのかがお分りいただけたかと思います。

コラム.骨盤そのものはゆがまない? 解剖学を知って骨盤を正しく理解しよう

「骨盤のゆがみって、骨盤そのものが変形することですよね?」

時々、患者さんにこのような質問を受けることがあります。
しかし、ほとんどの場合において、骨盤そのものが変形するというケースは少ないです。

くり返しになりますが、今まで解説してきた「骨盤のゆがみ」は、骨盤の前後のかたむきだったり、骨盤の高さの左右差を指しています。
今からお伝えすることは「骨盤そのものは変形しない(≒骨盤そのものはゆがまない)」ということです。

さて、骨盤そのものが変形しない理由を知るために必要な知識が、骨盤の解剖学です。

「解剖学!? なんだかむずかしそう・・・」と思うかもしれませんが、図を使ってカンタンに説明していくので、安心して読み進めてくださいね。

それではまず、骨盤の基礎についてご説明していきます。
よく「骨盤」とひとくくりで表現されることが多いですが、厳密にいうと以下の4つの骨で骨盤は構成されています。

骨盤の解剖学
骨盤=左右の寛骨(かんこつ)+仙骨(せんこつ)+尾骨(びこつ)

そして、寛骨は、部位によってさらに以下の3つにわけられます。

寛骨
寛骨=腸骨(ちょうこつ)+恥骨(ちこつ)+坐骨(ざこつ)
「坐骨」はよく聞いたことがあるかもしれませんが、実は寛骨の一部分を指していたのです。

さて、これまでの内容をまとめると、以下のようになります。

骨盤=左右の寛骨(腸骨・恥骨・坐骨)+仙骨(せんこつ)+尾骨(びこつ)

ちなみに、左右の寛骨は、腸骨と仙骨をつないでいる「仙腸関節(せんちょうかんせつ)」と、左右の恥骨をつないでいる「恥骨結合(ちこつけつごう)」で、つながっています。

仙腸関節と恥骨結合

「仙腸関節」は、関節を包む袋や、靭帯で補強されているので、3~5mmしか動かないといわれています。また、「恥骨結合」は成人になると硬くなるため、仙腸関節と同じでほとんど動きません。

そのため、骨盤そのものがゆがんだりすることは、出産や病的な状態をのぞいて基本的には考えられないのです。

ちなみに、妊娠中には、恥骨結合や靭帯をゆるめる「リラキシン」というホルモンが分泌されるため、仙腸関節や恥骨結合の柔軟性が増すと言われています。

6.まとめ

骨盤のゆがみのタイプを知り、自分に合ったエクササイズを見つけることはできましたか?

長い期間ゆがんでいた骨盤は、一筋縄では改善できないことをご理解いただけたかと思います。

ストレッチ+筋力トレーニング+日常生活の改善

これら3つのアプローチで、骨盤のゆがみを根本的から解消していくことオススメします。

「うわ〜大変そうだな・・・」と思うかもしれません。もし筋力トレーニングやストレッチが大変ならば、「あ、今ねこ背になっているな」「足を組むクセがあるから気をつけよう」などのように、日常生活のちょっとした習慣を見つめ直すことから始めることをオススメします。

小さな積み重ねが、数年後、数十年後のあなたの健康を作ります。逆にいうと、今のうちに骨盤のゆがみをリセットしておかないと、将来さまざまなところに痛みが出てくるかもしれません・・・

そのため、今回お伝えしたエクササイズを、まずは1日1セットでもいいので毎日続けてみることをオススメします。この記事が、あなたの骨盤の悩みを解決できるキッカケとなれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【参考文献】
・竹井 仁:正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書,株式会社ナツメ社,2018
・荒木 秀明:骨盤・脊柱の正中化を用いた非特異的腰痛の治療戦略,医学書院,2018
・永木和載、大平雄一(監):図解入門 よくわかる 腰・腰椎の動きとしくみ,秀和システム,2018
・國津 秀治:図解入門 よくわかる 股関節・骨盤の動きとしくみ,秀和システム,2018
・Diane Lee(著)、石井美和子(監訳)、今村安秀(監修):骨盤帯 原著第4版 臨床の専門的技能とリサーチの統合,医師薬出版株式会社,2013
・高崎恭輔、鈴木俊明、清水卓也:仙腸関節における骨盤偏移の評価と理学療法,関西理学 9,2009