「腰が反っているからお腹がぽっこり出ている・・・」
「反り腰がひどくて腰が痛い・・・」
「反り腰って健康に良くないの?」
スタイルを悪くみせたり、腰痛の原因となったりもする「反り腰」。
「反り腰を解消したい!」と思い、日ごろから腰や股関節のストレッチをしている方もいると思います。
しかし実は、腰や股関節ではなく「背中」に反り腰を引き起こす原因がひそんでいるケースがあるということをご存知ですか?
とはいえ、このような疑問が湧くのではないでしょうか。
反り腰っていうぐらいだから、なんとなく腰に原因があるような・・・
というわけで今回は、反り腰の原因について、理学療法士の私がくわしく解説していきます。
そして、リハビリの現場で実践しているエクササイズや、日常生活で気をつけるポイントなどもお伝えしますね。
目次
1.反り腰の原因は背中にあった? 反り腰とねこ背の深い関係
「反り腰の原因は、腰や股関節まわりの筋肉が硬いこと」
このように聞いたことはありませんか?
たしかに、腰や股関節まわりの筋肉が、反り腰を強くしていることもあります。
しかし実は、「ねこ背」が反り腰の根本原因となっていることもあるのです!
それではこれから、なぜねこ背が反り腰を引き起こしているのかを、順を追ってご説明していきますね。
「とりあえず早くエクササイズを始めたい!」という方は、次の章へお進みください。
以下では、経験上、若い方に比較的多い『胸椎から曲がる』パターンについて、話を進めていきます。

ねこ背とは、首を前に突き出し、「胸椎(きょうつい)」を丸める姿勢を指します。
ねこ背を続けてしまうと、背中の筋力が弱くなったり、首や胸椎まわりの関節が硬くなったりする可能性があります。その結果、背筋をピンっと伸ばすことがむずかしくなります。
この「背筋を伸ばしにくくなる」ということが、実は反り腰を引き起こす原因につながるのです・・・
その理由を知るために、まずはねこ背の人が立ったときの、重心の位置に着目してみましょう。
ねこ背の場合は、よい姿勢とくらべて重心は「前」に移動します。
つまり、カラダは前に倒れやすくなります。
となると、カラダを起こす必要がありますよね。カラダを起こすためには、背筋を伸ばして、「前」に移動した重心を「後ろ」に戻さないといけません。
しかし、先ほどもお伝えしたように、ねこ背がクセになると、首と胸椎まわりの関節が硬くなり、背筋を伸ばすことがむずかしくなります。
じゃあどうすればいいのか?
そんなとき、実は「反り腰」をすることで背筋を伸ばし、重心を後ろに戻すのです!
一体どういうことですか?
これから図を使って説明します。

硬くなり、動きにくくなった首と胸椎まわりの関節の代わりに、やわらかく、かつ動きやすい「腰」を反ることで背筋を伸ばし(カラダを起こし)、重心を後ろに移動させているのです。
さて、これまでの流れをまとめると、以下のようになります。
- ねこ背がクセとなる
- 首や胸椎まわりの関節が硬くなったり、背中の筋力が弱くなったりする
- 立ったときに、背筋を伸ばしにくくなる
- 立ったときの重心が、前に位置しやすくなる(カラダが前に倒れやすくなる)
- カラダが前に倒れないように、腰を反らせることでカラダを起こし、重心を後ろに移動させる(反り腰になる)
(※ほんの一例です。本当は、もっとさまざまな原因があります)
背中と腰の骨は上下でつらなっているので、ねこ背になると腰まで影響を受けやすいんです。
さて、反り腰の原因に「ねこ背が関係していることもある」と知ったところで、「どんなエクササイズをしたらいいの?」と思ったかもしれません。
しかし、エクササイズの前に、まずは自分が反り腰かどうかを知ることが大切。
次の章では、誰でもカンタンにできる反り腰のチェック方法をご紹介していきますね。
2.壁を使って反り腰をチェックしてみよう!
【方法】
1.はだしとなり、壁から踵(かかと)を1cmほど離してまっすぐに立ちます
2.頭と背中、おしりを壁にくっつけます
3.壁と腰のすき間に手を入れて、どれくらい手が入るかを確認します
・手の平1枚分がぴったり入る
・手首くらいで止まる
【△:反り腰になっている可能性あり】
・壁と腰のすき間に手の平が2枚以上入る
いつも通りの姿勢で立つことがポイントです。そうしないと、自分の本当の姿勢がわからないからです。
ちなみに、上の画像、頭がザックリ壁に埋まっていましたね。
さて、姿勢をチェックしてみて、「自分って反り腰かも・・・」と思った方は、次のストレッチと運動に取り組んでみてください。
3.反り腰には首と胸椎からアプローチする|ストレッチ&筋トレ7選
これまで、「ねこ背」が反り腰を引き起こす原因の1つだとお伝えしてきました。そのため今回のエクササイズは、ねこ背にアプローチすることで、反り腰を緩和していく方針となっています。
では、どのように、ねこ背にアプローチしていけばよいのでしょうか?
ポイントは、「首」と「胸椎」の柔軟性と筋力です。
前かがみの姿勢である「ねこ背」は、首と胸椎まわりの関節を硬くさせ、筋力も弱くなりやすい。
しかも、それだけではありません。
以下のように、さまざまな問題を引き起こす可能性もあるんです・・・!

そのため、これから上記の問題にアプローチするエクササイズをお伝えしていきますね。
なお、以下の順番で行なっていくことをオススメします。
【ステップ2】胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)のストレッチ
【ステップ3】頭の位置を戻すチン・イン
【ステップ4】座りながらおこなう胸椎回旋運動
【ステップ5】胸椎を反らすストレッチ
【ステップ6】胸椎を反らす筋力トレーニング
【ステップ7】肩甲骨まわりの筋力トレーニング
とはいえ、「その10分を取るのがむずかしいんだよね」という方も多いと思います。
その場合は、まずはステップ1だけでもいいので、ぜひ取り組んでみてください!
徐々に次のステップへと進んでいただければと思います。
エクササイズを始める前に必ずお読みください
今からご紹介するのは、健常者向けのエクササイズです。
脊椎や股関節の疾患がある方や、体調が優れない方などが以下のエクササイズをおこなうと、重大な事故につながる可能性があります。
エクササイズをする際は、事故に十分に注意をしつつ、自己責任でおこなってください。
・既往歴、現病歴がある方は、絶対におこなわないでください
・体調が優れない方、高血圧もしくは低血圧の方はおこなわないでください
・少しでも痛みやしびれが出たらすぐに中止してください
・まずは少ない回数で、ゆっくりとおこなってください
3-1.【ステップ1】大胸筋(だいきょうきん)のストレッチ
【方法】
1.壁に手のひらと肘をつけて固定し、カラダを壁と反対側に回します
(※「①鎖骨部のストレッチ」は手のひらだけを壁につけます)
2.以下の3つの部位を伸ばします
(※大胸筋は、3つの筋線維にわかれているため)
②胸肋部線維のストレッチ→90°〜120°の間で1番伸びる場所
③腹部線維のストレッチ→150°
3.反対側も同じようにおこないます
【時間】
1部位30秒(左右行います)
3-2.【ステップ2】胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)のストレッチ

※上の場合は、左の胸鎖乳突筋のストレッチをしています
【方法】
=左の胸鎖乳突筋のストレッチ=
1.左の鎖骨を押さえ、動かないように固定させます
2.首を軽く左に向けます(約30°)
3.そのまま、首をゆっくり右に倒していきます(※斜め左上を見ながら首を右に倒していく感じです)
=右の胸鎖乳突筋のストレッチ=
1.右の鎖骨を押さえ、動かないように固定させます
2.首を軽く右に向けます(約30°)
3.そのまま、首をゆっくり左に倒していきます(※斜め右上を見ながら首を左に倒していく感じです)
【時間】
左右それぞれ20秒
【注意点】
首は神経や血管が豊富であり、とてもデリケートな部分なので、ゆっくりとおこなってください。痛みやしびれが出たらすぐに中止してください。
3-3.【ステップ3】頭の位置を戻すチン・イン
【方法】
1.姿勢よく座ります(立ちながらでもOKです)
2.あごに指を置きます
3.指から離すように少しだけあごを引きます(※耳と肩のラインを合わせます)
4.あごを引いた状態で10秒キープします
【回数】
10秒×3セット
3-4.【ステップ4】胸椎の回旋(かいせん)運動

※回旋とは、カンタンにいうと捻ることだと思ってください。
【方法】
1.浅めに椅子に腰かけ、胸の前で腕を組みます
2.おへそをまっすぐ向けたまま、カラダを右に回します
3.おへそをまっすぐ向けたまま、カラダを左に回します
【回数】
左右それぞれ10回
3-5.【ステップ5】胸椎を反らすストレッチ
【方法】
1.四つばいになります
2.胸を床に押しつけるように、胸椎を反らしていきます
【時間】
30秒
3-6.【ステップ6】胸椎を反らす筋力トレーニング
【方法】
1.うつぶせになります
2.天井を見るように顔を上げ、胸椎を反らせます
【時間】
5秒×3セット
3-7.【ステップ7】肩甲骨まわりの筋力トレーニング
【方法】
1.四つばいになります
2.片方の腕を床と平行になるまで上げます(※腕を上げる際、若干腕を広げます)
3.反対側も同じようにおこないます
【回数】
左右それぞれ10回
4.それでも反り腰が変わらない場合の対処法|股関節のエクササイズをする
ここまで、首と胸椎にスポットライトを当ててエクササイズを紹介してきました。
しかし、反り腰となる原因は人それぞれなので、これまでお伝えしていきたエクササイズが、すべての方に合っているかというと、正直そうではありません。
もし、これまでのエクササイズを数週間やってみてもまったく効果がない場合は、「股関節」にも着目してみることをオススメします。
たとえば、デスクワークの方は、股関節を曲げて過ごす時間が長いですよね。しかも、パソコンなどをしていると、画面を見るためについつい前傾姿勢をとっていたりもします。
そうすると、股関節の前についている筋肉がちぢこまり、その影響で骨盤を前にかたむけてしまうのです・・・!
もちろん、立ったときも同じように骨盤は前にかたむきます。その結果、上の図の右側のように、骨盤の動きにつられて、腰が反ってしまうのです。
まとめると、以下のような流れになります。
- 椅子に座っている時間が長い
- 股関節の前についている筋肉が硬くなる
- 骨盤が過度に前にかたむく
- 前にかたむいた骨盤につられて、腰が反ってしまう(=反り腰)
このように、股関節が原因となり、反り腰を引き起こすこともあるのです。
なので、股関節まわりのエクササイズも、定期的におこなうことをオススメします!
以下の記事の「3-2.骨盤が前にかたむいている人向けのエクササイズ4つ」で、股関節の具体的なエクササイズをお伝えしています。ぜひご確認ください。
・骨盤のゆがみはストレッチだけでは意味ない? ゆがみの解消に必要な3つのアプローチとは
5.日常生活で気をつけるポイント|反り腰を予防する座り方や寝方を紹介
これまで、さまざまなエクササイズをご紹介しました。しかし、反り腰を根本的から解消していくためには、「日常生活での動きのクセ」を見直す必要があります。
いつも座っているときの姿勢が悪い、いつもスマホを見るときはうつむいている。このような悪い習慣を繰り返していると、エクササイズをしてもすぐに元に戻るため、いつまでたっても反り腰が解消されません。
なので、エクササイズにくわえて、普段の過ごし方もとても重要なのです。
そこで今から、反り腰を予防するための、日常生活で気をつけるポイントをお伝えしていきますね。
5-1.反り腰を予防する座り方

先ほど、椅子に長時間座っていると、股関節の前についている筋肉が硬くなり、反り腰を引き起こすことがあるとお伝えしました。なので、普段座っている姿勢はとても大切なんです。
椅子に座るときには、以下の3つをおさえてくださいね。
- 骨盤をしっかりと起こす
- ひざは90°に曲げる(90°より少し曲げても大丈夫です)
- 足裏全体を床につける
とはいえ、上記のような姿勢をずっと保つのはツライですよね。
なので、30分に1度は椅子から立ち上がって、カラダ全体を回したり、股関節を伸ばしたりしてあげましょう!
コラム:座る時間が長いと死亡リスクが高くなる?
余談ですが、「日本の成人は、世界一座っている時間が長い」という事実をご存知ですか?
日本人は、平均して1日約7時間も座っているというデータがあります。睡眠時間と同じくらいですよね(^^;)
そして、シドニー大学の大規模な研究では、座っている時間が長いと、なんと死亡リスクが高くなるという報告もされているのです・・・!(出典:日本生活習慣病予防協会)
現在はIT化が進み、デスクワークが増えてきました。先ほどもお伝えしたように、パソコン仕事の合間など、ぜひ立ち上がってカラダを動かしてあげてくださいね。
5-2.パソコンやスマホを見るときの、最適な画面の高さとは

パソコンやスマホを使っているときに、自分の首の位置を意識したことはありますか?
若い方の首を見ると、首を前に突き出す姿勢、いわゆる「ストレートネック」の方が、とても増えてきた印象があります。最近では、スマホの見過ぎでストレートネックになることを「スマホ首」と表現されるようにもなってきました。
そのため、パソコンやスマホの画面の高さは、首を15°くらい曲げた位置に調整しましょう。もしくは目線の高さでもかまいません。
ちなみに、ノートパソコンを使っている場合は、パソコンの下に本を重ねたり、パソコンスタンドなどを使えば、目線を上げて作業することができますよ。

なお、本の上にパソコンを乗せる場合は、表紙の材質によってすべりやすいこともあるので、パソコンが落ちないように十分お気をつけくださいね。
5-3.こんな寝方はNG! 寝ながら反り腰をひどくしていませんか?
実は、寝ている姿勢が、反り腰をひどくする原因となることもあります。
反り腰に気をつける人は、普段「あお向け」で寝ている方。なぜなら背骨のカタチはS状となっているため、腰とマットレスの間にすきまができやすいためです。

確認してほしいことが、腰とマットレスの間のすきま。
あお向けで寝てみて、腰とマットレスの間に手のひらを入れてみてください。
手のひらがスッポリと入ってしまう場合は、もしかしたら反り腰を強くしたり、腰の筋肉に負担をかけている状態かもしれません。
すきまが空いてしまう原因はさまざまですが、マットレスが硬かったり、枕が低すぎなどの可能性が考えられます。そのため、軽くあごを引いた状態を保てる高さの枕に変えたり、腰にすきまがあかないような硬さのマットレスを選んだりする必要があります。
6.反り腰を放置すると、どんなリスクがひそんでいる?
反り腰をほうっておくことで、どんな症状が出てくる可能性があるかををご存知ですか?
「腰が痛くなる」というイメージを持っている方が多いかもしれません。
しかし反り腰は、腰痛以外にもさまざまな症状を引き起こす原因となるのです。
人のカラダは全身つながっており、ひとつの関節が動くと、近くの関節も一緒に動きます。そして、さらに遠くの関節まで動く、という現象が起こるんです。
たとえば、立ちながら骨盤を後ろにかたむけてみてください。そうすると、重心は後ろに移動し、自然と膝が曲がってきて首は前に出てきますよね。
このように、ひとつの動きが全身に影響をあたえているのです。
さて、反り腰の場合も、さまざまな部分に悪影響を与えるのですが、その一部を以下の図で示しました。
これらは本当にごく一部で、数え上げればキリがありません。それほど、反り腰にはデメリットがあるのです。反り腰を放置していた期間が長ければ長いほど改善には時間がかかるので、今のうちに予防をしておくことを強くオススメします。
7.まとめ
いかがでしたか?
今回は、反り腰になる原因が、腰や股関節だけでなく、ねこ背による「首や胸椎の硬さと筋力の低下」が原因となるケースもある、とお伝えしてきました。
そして、ストレッチや筋トレ、日々の生活習慣で気をつけるポイントなども、たくさん紹介してきました。
「いろいろやることがあって大変そう・・・」と思うかもしれませんが、「今」している体のケアが、10年後、20年後の自分の健康につながってきます。
もしエクササイズに割ける時間がない場合は、「5.日常生活で気をつけるポイント|座り方や寝方を紹介」でお伝えした内容なら、普段の生活でも取り入れることができると思います。
ぜひ、できるところから取り組んでいただけるとうれしいです。
この記事をきっかけに、反り腰で悩んでいる方々の悩みが、少しでも解決できたら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
・D.A.Neumann(原著),P.D.Andrewほか(監訳):筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版.医歯薬出版株式会社.2018
・林典雄ほか:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション−上肢.株式会社メジカルビュー社.2008
・谷本道哉(著),石井直方(著):5つのコツで もっと伸びる 体が変わる ストレッチ・メソッド.高橋書店.2008