「ストレッチをするときは何に注意すればいいの?」
「ケガをしないよう、安全にストレッチをしたい!」

コリ固まった筋肉をやわらかくしたり、スポーツでのケガを予防したりするために、普段からストレッチをする方も多いと思います。
しかし、ストレッチの注意点を知っておかないと、ケガにつながることもあります。

そこで今回は、理学療法士のわたしが、ストレッチで気をつけるべき9つの注意点をお伝えしていきます。

なお、みなさんが普段おこなう機会が多いであろう「スタティックストレッチ」の注意点となります。

スタティックストレッチとは、反動を使わずにジワ〜っと伸ばすストレッチです。
以下が、今回お伝えする9つの注意点です。

ストレッチの注意点9つ いまから、それぞれ解説していきますね。
それではまいりましょう。

1.運動器疾患がある場合、まずは主治医に相談する

運動器疾患がある場合、まずは主治医に相談する
ストレッチは手軽にできるため、多くの方がやっていると思います。
しかしなかには「自分はストレッチをしても大丈夫なのか?」と確認しなきゃいけない方もいます。

その確認すべき人とは、腰のヘルニアや脊椎圧迫骨折、股関節に人工関節が入っているなどの「運動器疾患」を患(わずら)っている(いた)方。

もし上記のような方がストレッチ(主にカラダを曲げるストレッチ)をした場合、大きな事故につながることがあるんです…

いまの話を聞いて「もしかしたら、自分も該当しているかも」と不安になった方は、主治医もしくは整形外科などに勤務している理学療法士に相談してみてもよいでしょう。

いきなり怖いことをお伝えしちゃいましたが、この記事を読んでくださっているあなたには安全にストレッチをしていただきたいため、最初にお話しさせてもらいました。

2.カラダはやわらかいほどいい、というわけではない

カラダはやわらかいほどいい、というわけではない
「カラダってやわらかいほどいいんでしょ?」
このように思う方が多いと思います。

しかし逆に、カラダがやわらかすぎると、関節のトラブルを引き起こす可能性もあるんです。

たとえば、バレエダンサーや新体操選手のように、床にベターっと開脚できるとしましょう。
つまり、股関節を大きく広げられる範囲がとても大きい状態です。

しかし、股関節を大きく広げられる分、それを制御する筋力も必要になってきます。
その制御する筋力が弱いと、逆に股関節まわりがグラグラするため、関節に負担がかかってしまう可能性があるんです。

ちなみに、ふつうに暮らす分には、股関節は「25°〜45°」開けば問題ないといわれています。
なので、生活していくうえで必要な関節のやわらかさは、なにも股関節を180°開脚できるほどの柔軟性は必要ないんです。

ただし、先ほど挙げたバレエダンサーや新体操選手のように、姿勢の美しさを求められるスポーツ選手などには、開脚できるほどの柔軟性は必要です。

3.強い痛みをともなうストレッチはNG

強い痛みをともなうストレッチはNG
「痛みの限界近くまでストレッチをした方が、筋肉が伸びたような気がする!」
たしかに、痛みをこらえながらギューっと伸ばすストレッチは、効いた感じがしますよね。

しかし実は、強い痛みをガマンしながらおこなうストレッチでは、十分に筋肉を伸ばせていないこともあるんです。

「痛い!」という感覚は、無意識に筋肉を収縮させる「防御性収縮(ぼうぎょせいしゅうしゅく)」を引き起こします。
その結果、筋肉にチカラが入りっぱなしとなり、しっかりと筋肉を伸ばすことができていないんですね。

さらには、ストレッチ中に強い痛みをともなっている場合は、血圧が高くなる危険性もあります。
そのため、やはり強い痛みが出るほどのストレッチはオススメしません。

そこでわたしがオススメするストレッチの強さは「イタ気持ちいい」くらい。
「心地よい強さだな」という範囲で、ある程度の時間ストレッチすると「Ib抑制(わんびーよくせい)」という、伸ばしている筋肉がゆるむ仕組みがはたらくんです。

なので、強い痛みが出ないように、ゆっくりとストレッチしてくださいね。

4.呼吸は止めない

呼吸は止めない
ストレッチ中に、ついつい息を止めてしまっていませんか?
思い当たる方は要注意です。
なぜなら、息を止めながらストレッチをすると、血圧が高くなる可能性があるからです。

なので、ストレッチ中はしっかりと呼吸をおこないましょう。
呼吸はリラックス効果もあるため、より筋肉を伸ばしやすくなりますよ。
特に、息をゆっくり吐くことを意識しながら筋肉を伸ばすと効果的です。

以下の記事では、深い呼吸をする方法が書いてあるため、ぜひ参考にしてください。

5.ストレッチの時間は短すぎないようにする

ストレッチの時間は短すぎないようにする
ストレッチの時間が短すぎると、十分に筋肉が伸びていない場合があります。
せっかくストレッチをするなら、効果的な時間を知っておきたいですよね。

では、ストレッチのオススメの時間は何秒なのでしょうか?
まだまだ解明されていない部分もあるのですが、どの筋肉でも「1部分→30秒×3セット」は必要だといわれています。

「ストレッチの時間って、結構長いんだな…」と感じるかもしれませんね(^^;)
ただ、「ストレッチをしても、なかなかカラダがやわらかくならない」という方は、もしかしたらストレッチの時間が短すぎるのかもしれません。
なので「ストレッチの時間は足りているかな?」という視点もぜひ持ってくださいね。

以下の記事では、ストレッチの効果を最大限に高める方法が書かれています。
「ストレッチの効果的な時間」のほか、「週に何回やったらいいのか」「どのタイミングが効果的か」なども紹介しています。

6.反動は使わない

反動を使うストレッチは筋肉のケガに注意する
スタティックストレッチをおこなう場合は、反動をつけずにじわ〜っと伸ばすことが重要です。
反動をつけすぎると、筋肉が急激に伸びてしまいケガをする可能性も。

なので、運動不足の方やご高齢の方などは特に、反動を使わずじんわりと安全に筋肉を伸ばしてくださいね。

ちなみに、反動を使うストレッチとして「動的ストレッチ」があります。
とはいえ「反動を使って筋肉を伸ばすのはよくないんじゃないの?」と思ったかもしれません。

しかし動的ストレッチは、運動前におこなうことでパフォーマンスアップにつながる効果が期待できるんですよ。

7.不安定な姿勢でストレッチしない

不安定な姿勢でストレッチしない
これは意外に知られていないことですが、ストレッチをするときは安定した姿勢でおこなうことがポイントです。
安定した姿勢とは、たとえば床に座っている状態や、寝た姿勢などです。

もし、カラダがグラグラと不安定な状態でストレッチをすると、バランスを崩さないように、さまざまな筋肉にチカラが入っちゃいます。
そのため、アプローチしたい筋肉を十分に伸ばせていないことがあるんです。

イメージが湧きやすいように、太ももを伸ばすストレッチを例に説明しますね。
たとえば、立った状態で太ももを伸ばときは、以下のような方法をとる方が多いと思います。

太もものストレッチ(立位)

このように、何もつかまらず太ももをストレッチをすると、バランスを崩さないようにと、脚や体幹、腕など全身にチカラが入ってしまう可能性があります。

なので、太ももをしっかりと伸ばしたい場合は、以下のように座ってストレッチをするといいでしょう。

太もものストレッチ(座位)

このように座ると、姿勢が安定するため、ほかの筋肉にも余計なチカラが入りません。
そのため、太ももの筋肉をピンポイントで伸ばすことができるんです。

もちろん、ストレッチの種類や場所によって、寝たり座ったりすることができない状況もあると思います。
ただ、「姿勢が安定していた方が、筋肉をしっかりと伸ばすことができるんだな」ということを知っておくと、ストレッチのやり方が変わってくると思いますよ。

8.カラダが冷えた状態でのストレッチは注意! 筋温は高い方がいい

カラダが冷えた状態でのストレッチは注意! 筋温は高い方がいい
カラダが冷えた状態でいきなりグッとストレッチをすると、筋肉が痛むことがあります。
そのため、カラダが冷えているときは、普段よりもゆっくりと慎重にストレッチすることをオススメします。

さらにいうと、ストレッチをする前に筋温(筋肉の温度)を高めておくと良いです。
たとえば、ジョギング後や入浴後だと、より筋肉を伸ばしやすいですよ。

これはみなさんイメージしやすいですよね。
できる限り、カラダを温めたうえでストレッチをしてくださいね。

9.ストレッチをして痛みが悪化する場合は、専門家に相談する

ストレッチをして痛みが悪化する場合は、専門家に相談する
ストレッチをすると、まれに痛みが悪化することがあります。

たとえば、なで肩のヒトが「僧帽筋(そうぼうきん)」という肩の筋肉を伸ばすときは注意が必要です。
なで肩の場合、僧帽筋が弱っており伸びているケースがあります。
そのため、伸びている僧帽筋に対しさらにストレッチで伸ばすと、余計になで肩を悪化させる可能性があるのです。

もし、ストレッチをして症状が悪化した、ストレッチをしても全然痛みが変わらない、という場合は、医師や理学療法士、柔道整復師などの国家資格を持った専門家に相談してみることをオススメします。

まとめ

今回は、ストレッチの注意点を9つお伝えしました。
最後にもう一度、振り返ってみましょう。

ストレッチの注意点9つ

たくさん注意点があるため「全部意識するのは大変そう…」と思ったかもしれません。
しかし、できるところからで大丈夫ですので、ぜひ1つずつ日々のストレッチに取り入れてみることをオススメします!

この記事をご覧になった方が、ケガなく、安全にストレッチできることを心から願っています。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。