「硬いふくらはぎをやわらかくしたい!」
「ふくらはぎが硬いと、足のむくみがひどくなるの?」
「足がつりやすいのは、ふくらはぎが硬いから?」
ふくらはぎは「第2の心臓」とよばれているほど、ヒトにとっては重要な筋肉。
(ちなみに、ふくらはぎがあるのは人間だけらしいです)
わたしは理学療法士としてリハビリの現場に出ていますが、ふくらはぎが硬い方は、足がむくんでいたり、足がつりやすかったりするケースが本当に多いです…
そのため、普段からふくらはぎをやわらかくしておくことはとっても大切。
ふくらはぎをやわらかくする方法としては、たとえば以下のようなアキレス腱を伸ばすストレッチがいい、とよくいわれています。

しかし実は、「ふくらはぎだけ」をストレッチしても、またすぐに硬くなるケースがあるということをご存知ですか?(その理由は、のちほどお伝えします)
そのため今回は、さまざまな視点での、ふくらはぎをやわらかくする方法を紹介していきます!
そして、ふくらはぎの筋肉が硬くならないための予防法もお伝えするため、ぜひ参考にしてくださいね。
ふくらはぎが硬くて困っている方に、すこしでもお役に立てればと思います。
それではまいりましょう!
1.そもそもふくらはぎの筋肉とは?
まずは、ふくらはぎの基礎知識をお伝えします。
一般的に、ふくらはぎの筋肉は「腓腹筋(ひふくきん)」と「ヒラメ筋」を指していることが多いです。
ちなみに、これら2つの筋肉をあわせて「下腿三頭筋(かたいさんとうきん)」といいます。

下腿三頭筋は、姿勢を保つ役割があったり、歩くときの蹴り出しの推進力を生み出したりと、生活していくうえで必要不可欠な筋肉。
ちなみに、「足がつったー!!」というときも、下腿三頭筋が関係していることが多いんです。
そんな下腿三頭筋について、いまから「腓腹筋」と「ヒラメ筋」に分けて解説していきます。
1-1.腓腹筋(ひふくきん)とは

腓腹筋とは、ふくらはぎの一番表面にある筋肉。
ひざの裏からはじまって、最終的にはアキレス腱となり、かかとの骨につきます。
腓腹筋が発達しているヒトなら、ふくらはぎに力を入れたときにボコッと出てくるため、肉眼でも確認しやすい筋肉です。
腓腹筋の主なはたらきは、かかとを上げたり、ひざを曲げたりなど。
さらに具体的にいうと、歩くときの蹴り出しや、ダッシュ、ジャンプなど、推進力や瞬発力を生み出す役割が大きいです。
1-2.ヒラメ筋とは

ヒラメ筋とは、腓腹筋の裏がわにある筋肉。
つまり、腓腹筋より深いところにヒラメ筋はあります。
腓腹筋よりすこし下の方からはじまり、最後は腓腹筋と合わさりアキレス腱となることで、かかとにつきます。
ヒラメ筋のはたらきは、腓腹筋と同じくかかとを上げること。
しかし、腓腹筋とは違い、ヒラメ筋はひざを曲げるはたらきはありません。
なぜなら、腓腹筋はひざにまたがって筋肉がついているのに対し、ヒラメ筋はひざにはまたがってついていないからです。
さらには、腓腹筋はダッシュをしたりジャンプをしたりと、瞬発力を必要とする動作でよくはたらきますが、ヒラメ筋はその逆。
ヒラメ筋は持久力があり、主に長時間姿勢を保つ役割をになっています。
あまり気づかないと思いますが、ヒトは立っているときに、ほんのすこしカラダが前後左右に揺れています。
そしてカラダが前に倒れそうになったときは、ヒラメ筋がふんばって姿勢をまっすぐに戻そうとしてくれるのです。
このおかげで、ヒトは安定して立っていることができるんですね。
ちょっと地味ですけど、縁の下のチカラ持ち的な存在なのが、ヒラメ筋なんです!
2.ふくらはぎの筋肉が硬くなると、どんなデメリットがあるの?
先ほどもお伝えしましたが、ふくらはぎは「第二の心臓」といわれてます。
そのため、硬くなることでカラダに悪影響をおよぼすことも…
ふくらはぎが硬くなると、以下のような3つのデメリットが出てくる可能性があります。
- 足がむくみやすくなったり、冷えやすくなる
- 足がつりやすくなる
- 歩行や立ち上がりが、やりにくくなる
それぞれ解説していきますね。
2-1.足がむくみやすくなったり、冷えやすくなる

「リンパ液の流れが悪いと、足がむくみやすくなる」
このように聞いたことがある方は多いと思います。
実は、リンパ液の流れが悪くなる原因の1つに、「ふくらはぎの筋肉の硬さ」があるんです。
その理由を、今からすこし説明していきます。
ちょっとむずかしいかもしれませんが、がんばってついてきてくださいね。
そもそもリンパ液とは、血管からしみ出た成分。
血管の成分を含んだリンパ液は、その成分を再び血管へ戻す役割があります。
リンパ液はカラダのいたる部分に流れていますが、足に流れているリンパ液の場合は、重力に逆らいながら鎖骨あたりまで上がっていき、最終的には血管(静脈)へ流れこむ必要があります。
つまり、足にあるリンパ液は、カラダの一番下から上の方までのぼっていかないといけないんです。
ではどのようにして、足にあるリンパ液を、カラダの上の方に位置する鎖骨あたりまで移動させることができるのでしょうか?
実は、ふくらはぎの筋肉を収縮させることで、それがポンプの役割を果たし、リンパ液をカラダの上の方までグッと押し上げているんです。
これを「筋ポンプ作用」といいます。

しかし逆に、ふくらはぎの筋肉が硬くなると、筋ポンプ作用が十分にはたらかなくなります。
その結果、リンパ液が足にたまり、足がむくんでしまうんですね。
さらには血流も悪くなるため、足に冷えを感じることもあります。
2-2.足がつりやすくなる
寝ているときやスポーツをしているときなどに、突然足をつってしまった経験はありませんか?
足がつってしまう原因は、いまだはっきりとは解明されていませんが「筋肉の血流の悪さ」や「電解質のバランスの崩れ」などが原因ではないかと考えられています。
電解質とは、水に溶けると電気を通す物質です。
たとえば、ナトリウムやカルシウム、マグネシウムなどの「ミネラル」がそう。
ミネラルは、筋肉の収縮や神経の伝達の役割をになったりと、ヒトが生きていくうえで重要な物質なんです!
ふくらはぎの筋肉が硬くなると、ふくらはぎの血流が悪くなります。
さらには、血流が悪くなることで足の新陳代謝も悪くなり、ふくらはぎの筋肉を動かすために必要なミネラルも不足がちに。
これらのダブルパンチで、「筋肉の血流の悪さ」や「電解質のバランスの崩れ」が起こり、足がつってしまうことがあるんです。
2-3.歩行や立ち上がりが、やりにくくなる
普段、わたしたちは何気なく歩いたり、イスから立ち上がったりしていますよね。
しかし実は、足首のやわらかさがあってこそ、スムーズにできる動作なんです。
たとえば歩くとき。
私たちは、歩くときに脚をうしろに伸ばしますよね。

しかし足首が硬いと、足首が曲がりにくくなるため、脚をじゅうぶんにうしろに伸ばすことができなくなります。
その結果、本来、脚の振り出しにチカラは必要としないのに、太ももを普段以上にあげる必要があったりと、脚に余計なチカラを入れる必要が出てくるんです。
そうすると、歩くときに足の筋肉に疲れが出やすくなったりします。
さらに、立ち上がるときにも、足首のやわらかさはとても大切。

立ち上がるとき、重心を足首の方へ移動させる必要があるのですが、その際に足首が硬いと重心をじゅうぶんに前に移動させることがむずかしくなります。
そのため、立ち上がるときに、必要以上に太もものチカラが必要となってきます。
わたしは普段、ご高齢の方のリハビリをおこなっているのですが、足首が硬い影響で立ち上がることがむずかしい方をよくみます。
たとえば、重心がうしろにある状態で立ち上がろうとするため、立ち上がってもすぐにうしろにドスンと座りこんだりされます。
そんなときに、足首のストレッチをしたり筋肉の収縮を入れたりすると、重心が前に移動しやすくなり、立ち上がりがスムーズにできるようになるケースがけっこうあるんですね。
ちなみに、足首が上方向に10°曲がれば、立ち上がりがスムーズにできるといわれています。
足首の硬さが、むくみや冷え、さらには日常生活においてデメリットをきたすことが分かったと思います。
お次はいよいよ、ふくらはぎの筋肉をやわらかくするためのストレッチを紹介していきます!
3.ふくらはぎのストレッチ方法
それではいまから、ふくらはぎのストレッチ方法をお伝えしていきます。
しかし、ストレッチをおこなう前に、1つ豆知識を紹介させてください。
実は、ふくらはぎの筋肉をストレッチをしても、すぐ硬さが戻ってしまうことがあるんです…!

上の図をみていただくと分かりますが、ふくらはぎの筋肉は「ハムストリングス(※太ももうらの筋肉)」とつながっています。
さらに、この図にはのっていませんが、足うらの腱である「足底腱膜(そくていけんまく)」ともつながっています。
そのため、ふくらはぎの筋肉だけをストレッチしても、その近くにあるハムストリングスや足底腱膜が硬いままだと、ふくらはぎの筋肉も連動して硬くなってしまうんですね。
なので、何度ふくらはぎのストレッチだけをしても、結局はもとに戻ってしまうんです…
ぜひ、ふくらはぎの筋肉だけでなく、ハムストリングスや足底腱膜もセットでアプローチすることをオススメします!
そのため以下では、3つの部位に対するアプローチ方法を紹介していきますね。
- ふくらはぎの筋肉(腓腹筋とヒラメ筋)のストレッチ
- ハムストリングスのストレッチ
- 足底腱膜(そくていけんまく)のリラクゼーション
それではまいりましょう!
3-1.ストレッチを始める前に必ずお読みください

今からご紹介するのは、健常者向けのストレッチやエクササイズです。
脊椎や股関節の疾患がある方、体調が優れない方などが以下のストレッチやエクササイズをおこなうと、重大な事故につながる可能性があります。
ストレッチやエクササイズをする際は、事故に十分に注意をしつつ、自己責任でおこなってください。
・既往歴、現病歴がある方は、絶対におこなわないでください
・静脈瘤や心臓に疾患がある方は、医師に相談したうえで検討してください
・体調が優れない方、高血圧もしくは低血圧の方はおこなわないでください
・少しでも痛みやしびれが出たらすぐに中止してください
・まずは少ない回数で、ゆっくりとおこなってください
3-2.腓腹筋のストレッチ

【方法】
1.足を前後に開き、うしろ足のひざを伸ばします
2.まえ足の方に体重をかけます(うしろ足のひざは伸ばしたままキープします)
【時間・回数】
左右30秒ずつ
ひざを曲げておこなうと、腓腹筋ではなく、ヒラメ筋が伸びやすくなります。
3-3.ヒラメ筋のストレッチ

【方法】
1.片ひざを立てて座ります
2.体重を前にかけます
【時間・回数】
左右30秒ずつ
腓腹筋のストレッチは、ひざを「伸ばす」。
このように憶えておくといいですよ。
なお、「立ってやりたい」という方は、以下の方法でおこなってください。
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【方法】
1.足を前後に開き、うしろ足のひざを曲げます
2.体重を前にかけます
【時間・回数】
左右30秒ずつ
3-4.ハムストリングスのストレッチ

【方法】
1.片方の脚を前に伸ばします
2.カラダをゆっくりと前にたおします
【時間・回数】
左右30秒ずつ
ハムストリングスは硬い方が多いため、痛みが出ない範囲でストレッチをしてくださいね。
3-5.足底腱膜(そくていけんまく)のリラクゼーション

【方法】
1.硬めのボールを用意します(ゴルフボールやテニスボールなど)
2.足首を直角よりすこし上げます
3.足のうらをボールでグリグリ回します
【時間・回数】
左右30秒ずつ
3-6.コラム:筋肉をやわらかくする方法はストレッチだけじゃない!
筋肉をやわらかくする方法は、ストレッチやマッサージなどが頭に浮かぶと思います。
現にいま、ストレッチを紹介しましたもんね。
しかし、筋肉をやわらかくする方法はいろいろあります。
たとえば、筋肉をくりかえし収縮させることで血流をうながし、筋肉をやわらかくすることもできるんです。
具体的には、以下のような方法があります。
イスに座ってできて、かつ手軽な運動ですので、よかったらデスクワークの合間などにぜひ実践してみてください。

【方法】
1.イスに座った状態で、両足のかかとを上げます
2.ストンとかかとを下ろします
【回数】
20回〜30回
いかがでしたか?
どのストレッチもカンタンにできますので、ぜひ実践してみてくださいね。
特に、お風呂上がりは筋肉がやわらかいので伸びやすいですよ。
それでは最後に、ふくらはぎが硬くなる原因について取り上げたいと思います!
さらに予防法もお伝えするので「根本からふくらはぎの硬さを解消したい!」という方は、ぜひ参考にしてください。
4.ふくらはぎの筋肉が硬くなる原因とは? 予防法も紹介
ふくらはぎの筋肉が硬くなる原因はさまざまですが、よくみられるケースとして以下の3つがあります。
- 姿勢が悪い
- 足の冷え
- 運動不足
それぞれ解説していきますね。
4-1.【原因1】 姿勢が悪い
わたしが、リハビリで1番よく遭遇(そうぐう)するケースが「姿勢の悪さ」から生じるふくらはぎの硬さ。
特にねこ背の方が「寝ているときに、よく足がつるんです・・・」「ふくらはぎがパンパンなんです」と訴えることが多いです。
なぜ、ねこ背の方がふくらはぎが硬くなるのかを、いまからすこし解説しますね。
それでは以下の図をご覧ください。

このようにねこ背の場合、よい姿勢くらべて重心が前に移動し、カラダが前にたおれます。
そのとき、カラダが前にたおれないように姿勢を保ってくれるのが、ふくらはぎの筋肉なんです。
「1-2.ヒラメ筋とは」でもお伝えしましたが、主要姿勢筋であるヒラメ筋が特にはたらきます。
しかしねこ背が続くと、ヒラメ筋はカラダが前にたおれないようはたらき続けるため、疲れてしまいます。
その結果、ヒラメ筋の血流が悪くなり、筋肉が硬くなってしまう可能性があるのです…
なので、ふくらはぎの硬さを根本的に解消していくためには、日頃からなるべく良い姿勢で過ごすことがポイント。
もし「わたしって、昔からねこ背なんだよね…」とお悩みの方は、以下の記事をご覧ください。
反り腰の記事ですが、ねこ背の方にも有効なエクササイズを紹介しています。
・反り腰の原因は背中にある? 理学療法士が教えるストレッチ&筋トレ7選!
ちなみに、ヒールを履く機会が多い方も、ふくらはぎが硬くなりやすいため注意!
というのも、ヒールを履いたときはつま先立ちの状態となるため、ねこ背と同じように重心が前に移動しやすくなります。

さらには、ヒールを履いたときは、足首が下に向いていますよね。
このとき、ふくらはぎの筋肉は縮こまっている状態なので、その状態が続くと筋肉が硬くなるのです。
なので、なるべく長時間ヒールを履き続けることは避けた方が無難です。
もし1日中ヒールを履いたとしたら、先ほどお伝えしたストレッチをお風呂上がりなどにぜひおこなってくださいね。
4-2.【原因2】 足の冷え
ふくらぎの筋肉が硬いと足が冷えやすくなります。
ただ逆もしかりで、足が冷えることでふくらはぎの血流が悪くなり、筋肉が硬くなることもあるんです。
冬場や夜は特に足が冷えやすいため、日頃から足を冷やさないように心がけておく必要があります。
また、お風呂の際、シャワーのみで済ましてしまう方もいると思いますが、なるべく湯船につかって足の血流をうながしてあげてくださいね。
4-3.【原因3】 運動不足

WHO(世界保健機関)の報告では、現在、日本人の3人に1人が運動不足といわれています。
いまや外にでなくてもネットで物が買えたり、IT化が進みデスクワークが増えたりしましたもんね。
そして運動不足は、ふくらはぎを硬くする原因にもなります。
記事中でもお伝えしましたが、ふくらはぎの筋肉には、血流をうながすための筋ポンプ作用があります。
しかし、運動不足によって筋肉を動かす機会が減ると、筋ポンプ作用がじゅうぶんにはたらかず、血流が悪くなるんです。
その結果、ふくらはぎが硬くなっちゃうんですね。
ちなみに、18歳以上の方は、1日30分の運動を週5回以上すすめられています。
ぜひ、ウォーキングなどの軽い運動でもいいので、毎日継続することをオススメします。
激しいスポーツをしている方に多いのですが、筋肉の収縮が多い状態が続くと、硬くなりやすいのです。
5.まとめ
ふくらはぎの筋肉が硬くなると生じるデメリットや、ふくらはぎをやわらかくするストレッチ、そして予防法を解説してきました。
冒頭でもお伝えした通り、ふくらはぎは第2の心臓といわれています。
ふくらはぎが、いかに大切かということがお分かりいただけたと思います。
よく、オシャレは足元からといいますが、「健康も足元から」です!
ぜひ、仕事のスキマ時間やお風呂上がりなどに、こまめにふくらはぎのストレッチをすることをオススメします。
また、普段の姿勢や、足の冷えなどにも十分お気をつけください。
それでは、これからもあなたの健康を心から祈っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
・中村隆一(編),齋藤宏(著),長崎浩(著):臨床運動学.第3版,pp410-412,医歯薬出版株式会社,2002.
・竹井仁(監):ビジュアル版 筋肉と関節のしくみがわかる事典.p134,西東社,2013.
・坂井建雄(監),町田志樹(著):PT・OTビジュアルテキスト専門基礎 解剖学.pp140-141,羊土社,2018.
・一般社団法人 日本生活習慣病予防協会:「運動不足」が世界に蔓延 日本でも3人に1人が運動不足 WHOが報告,http://www.seikatsusyukanbyo.com/calendar/2018/009685.php,最終閲覧日2018月9月10日.